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【説教】エルサレムよ、悲しみと不幸の衣を脱ぎ

バルク書5:1-9

2021年12月5日・降臨節第2主日

上野聖ヨハネ教会にて

 

 今日は先ほど読まれた旧約聖書続編のバルク書の世界に、少しでも入ってみたいと願います。

 バルクとは、紀元前600年頃の預言者エレミヤの書記をしていた人で、エレミヤと共にユダ王国の滅亡の悲劇を経験し、やがてエレミヤと共にエジプトに強制的に連れて行かれたと言われます。バルク書は、そのバルクが記したものとされているのですが、実際は後の時代の人がバルクの名を借りて書き記したもののようです。けれどもバルクの精神を伝える貴重な書です。

 今日の5章の冒頭はこうでした。

「エルサレムよ、悲しみと不幸の衣を脱ぎ、神から与えられる栄光で永遠に飾れ。」バルク5:1

 「エルサレムよ」とだれかが呼びかけています。遠い昔のエルサレムです。耐えがたい悲しみと不幸を経験したエルサレムです。ただ町の名前、というのではなく、人格的存在として、「神の民の母」として、エルサレムは呼びかけられています。何があったのでしょうか。

 母なるエルサレムは、国が滅び神殿が焼かれて、自分の子どもたち(エルサレムの住民)が捕らえられて外国に引っぱられて行くのを見ました。エルサレムは、自分の子らが神に背いて、そのゆえに裁きを受けたことを痛切に知りました。

 4章19~20節でエルサレム自身がこう言います。

「行きなさい。子らよ、さあ行きなさい。わたしはただ一人とどまり、平和の衣を脱ぎ、祈願のための粗(あら)布(ぬの)をまといました。命のある限り、わたしは、永遠の神に向かって叫びます。」

 母なるエルサレムは子らのゆえに苦しんで、平和の衣を脱ぎました。そして粗布をまとって、「子どもたちを救ってください」と、神に向かって叫びました。

……