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コリントの信徒への手紙Ⅱ 12:2-10
2024年7月7日・聖霊降臨後第7主日
上野聖ヨハネ教会にて
*
今日は、使徒書、パウロの「コリントの信徒への手紙Ⅱ」第12章を読んでみましょう。
初めにいくらかこの手紙の背景をお話しします。コリントはギリシアの大都市です。パウロはここに約1年半滞在してコリント教会の基礎を築いた後、そこを去って別の場所に移りました。ところがその後にコリント教会に入ってきた有力者たちの影響で、福音の理解が歪められ、しかも教会の中に分裂が生じ、党派争いが激しくなりました。これを心配したパウロは最初の手紙を書き送り、さらに直接コリントをもう一度訪問して、教会の混乱を静めその歪みを正そうとしたのです。ところがかえってコリント教会のおもだった人たちがパウロを非難するようになり、関係は険悪になってしまいました。
それでパウロは深い悲しみと怒りを抱きつつも、コリントの人々を切に愛する思いで、涙ながらに手紙を書きました。10章から13章がそれにあたるとされています(実は、この「コリントの信徒への手紙Ⅱ」はいくつかの手紙が一つにまとめられたものとされます)。今日の箇所は、その「涙の手紙」の一部です。
ここでパウロは、何とかしてコリントの人々に自分の気持ちを通じさせたいと、普通ならば言わないようなことまで書いています。たとえばこうです。
「あなたがたを愛すれば愛するほど、わたしの方はますます愛されなくなるのでしょうか。」コリントⅡ 12:15
コリント教会の人々というのは、つい2~3年前まで、自分が苦労して心をこめて、その信仰を産み育てた、大切な大切な存在なのです。ですから今の葛藤の状態はとても辛(つら)い。
パウロはこの手紙の中で、自分の苦労のことも書きました。
「ユダヤ人から四十に一つ足りない鞭を受けたことが五度。鞭で打たれたことが三度、石を投げつけられたことが一度、難船したことが三度。一昼夜海上に漂ったこともありました。……しばしば眠らずに過ごし、飢え渇き、しばしば食べずにおり、寒さに凍え、裸でいたこともありました。」11:24-27
耐えがたい苦しみと命の危険に何度もさらされる中で、彼はあるとき、不思議な経験をしました。今日の使徒書の冒頭です。他のだれかのことのような言い方をしていますが、パウロ自身のことです。
……