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【説教】彼は立って、群れを養う

ミカ書 5:1-3
ルカによる福音書 1:39-45

2024年12月22日・降臨節第4主日

京都聖三一教会にて

およそ15歳のマリアは、だれにも言えない秘密を心に抱えていました。しばらく前、彼女は、とても考えられないことを経験しました。天使がマリアに現れて言ったのです。
「聖霊があなたに降(くだ)り、いと高き方の力があなたを包む。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる。」ルカ1:35
「あなたは神の子を産む」と言われたのです。

マリアは決意して天使の言葉を受け入れました。神さまを信頼して、その救いの業に自分をゆだねました。不思議な力と喜びと平安に包まれました。けれども、人としては不安と恐怖が時として襲ってきます。このようなことを婚約者ヨセフに話したとしても、とても信じてもらえないかもしれません。
自分ひとりの胸にこれを納めておくには、あまりに重く大きなことでした。このことを話せるとしたらだれか。ただひとり思い浮かびます。エリサベト。マリアは決意しました。親類のエリサベトを訪ねてこのことを話そう。あのとき天使は、もう年が進んでいるエリサベトが子どもを身ごもって6ヵ月になる、と言っていた。

マリアは決意し、立ち上がって出かけました。それが今日の福音書です。
「そのころ、マリアは出かけて、急いで山里に向かい、ユダの町に行った。」ルカ1:39
北の地ガリラヤのナザレから、行き先は南のユダの山里の町です。片道3日はかかるでしょうか。「急いで」という言葉に、マリアの気持ちと決意が示されています。
「神さま、あなたを信じます。わたしを助けてください。エリサベトが、わたしが話すことを受け入れてくれますように」

ずっと祈りながら道を急いだに違いありません。そして、とうとう着きました。
 
「そして、ザカリアの家に入ってエリサベトに挨拶した。マリアの挨拶をエリサベトが聞いたとき、その胎内の子がおどった。エリサベトは聖霊に満たされて、声高らかに言った。『あなたは女の中で祝福された方です。胎内のお子さまも祝福されています。』」ルカ1:40-41

驚きと安心、喜びと感謝が湧き起こります。マリアの予想をはるかに超えて、エリサベトはすべてを理解してくれました。一緒に喜んでくれました。これはほんとうの信仰の出会いです。困難や危険を抱えつつも神さまを本気で信じる者どうしの出会い。神さまの御心を行おうと決意した者どうしの出会いです。お互いに慰められます。励まされます。勇気が湧いてきます。マリアとエリサベト。これからこの二人は、たとえ生活する場所が違っても、祈りあい、支えあって、神さまのために生きて行くのです。

この二人の出会いはとても大切な出来事なので、これを記念する日が教会暦の中に定められました。「おとめ聖マリヤの訪問」の祝日です。祈祷書の教会暦の小祝日を見ると、5月31日がこの日です(13頁)。バッハはこの祝日のために美しい音楽を作りました。それが教会カンタータ147番「心と口と行いと生活で」(全10曲)で、その最後の曲が有名な「主よ、人の望みの喜びよ」の名で広く知られるようになったコラールです。

ところでマリアがエリサベトと出会ったとき、何が起こったのでしょうか。こう言われています。
「マリアの挨拶をエリサベトが聞いたとき、その胎内の子がおどった。」1:41

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