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【燃える松明──アブラハムの経験した神の愛】

創世記 15:1-12、17-18
ルカによる福音書 13:31-35

2025年3月16日・大斎節第2主日

聖光教会にて

   *

今日の旧約聖書、創世記第15章は遠い昔の物語です。アブラハムとサラ、またその一族は、神の言葉に従って長い旅をしてきました。今はカナン(今のパレスチナ)の地、ヘブロンという町の近くのマムレの樫の木のそばに天幕を張って住んでいました。神からは子孫と土地を与えるという約束を受けたのですが、現実には子どもは与えられず、異国の人々に囲まれて不安と緊張の中で過ごす日々でした。長く神の声を聞くことがないままに、時が過ぎていきました。

しかし神はこの日、ついに沈黙を破ってアブラハムに語りかけられました。子孫を与える約束を確認して彼を励まされたのです。夜でした。彼は主に促されて天幕の外に出て、満天の星を仰ぎました。主は言われました。
「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみるがよい。あなたの子孫はこのようになる。」
「アブラムは主を信じた。主はそれを彼の義と認められた。」と記されています(創世記15:5-6)。
主はまた彼に言われました。
「わたしはあなたをカルデアのウルから導き出した主である。わたしはあなたにこの土地を与え、それを継がせる。」15:7

そう言われてアブラハムは、これまでの長い年月と曲折の中にも主の導きがあったと思うと、心にしみるものがありました。けれどもなお不安があります。約束の確かさがほしいのです。

「わが神、主よ。この土地をわたしが継ぐことを、何によって知ることができましょうか。」15:8
彼は主にしるしを求めたのです。

すると主は答えてこう言われました。
「三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩と、鳩の雛とをわたしのもとに持って来なさい。」15:9
アブラハムはその意味を理解しました。主は、契約の儀式の準備をするように言われたのです。彼は、主が言われたとおり、それらの動物をみな持って来て、真っ二つに切り裂いて、それらを互いに向かい合わせに置きました。ここに主を迎えるのです。

契約は非常に重要なものです。たとえば二つの集団が一つの井戸を使うときに、使い方を決めて契約を結ぶ。そのとき、動物を二つに切り裂いて、それを向かい合わせに両側に置き、その間を契約の両方の当事者が通る──これが当時の契約の仕方でした。もし契約を破れば、この動物のように自分の身が二つに切り裂かれてもよい。そのように命をかけて行うのが契約だったのです。主なる神はこのやり方を用いて、アブラハムとの間に契約を行おうとされる。ご自分の命をかけてその約束を保証しようとしておられる。自分も命をかけて主に忠実を果たそうと、アブラハムは決意しました。

……