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【説教】命のパンとなるために

ルカによる福音書 15:11-24

2025年3月30日・大斎節第4主日
京都聖三一教会にて

先ほど、大斎節4主日の特祷を献げました。特祷は司式者だけが唱えることもあり、あっという間に過ぎ去ってしまうかもしれません。けれども今日の特祷は特に大切な内容を含んでいますので、この祈りを味わってみることにしましょう。

ところで「特祷」は英語では“collect”です。「集める」という意味ですね。これは皆の祈り、会衆一人ひとりの祈りを集めてまとめたもの、ということです。聖公会の始まり、16世紀の英国の宗教改革の際、トマス・クランマー大主教を中心として英語の祈祷書が編集されました。それまでの礼拝はラテン語で行われていたものを、自分たちの言葉で礼拝を献げようという強い願いと意志をもって作られたのが祈祷書です。そのときに特祷も、皆が一緒に心を込めて祈れるように、苦心して整えられたのです。それですから、わたしたちも特祷を大切に祈りたいと思います。

さて今日の特祷は大きく四つの部分に分けられます。第1は神への呼びかけです。
 「恵み深い父なる神よ」
第2は神の恵みの業の確認、言い換えると信仰告白です。
 「み子は、すべての人のまことの命のパンとなるために、天からこの世に降られました。」
第3は祈願、祈り求めです。
 「どうかこの命のパンによってわたしたちを養い、常に主がわたしたちのうちに生き、わたしたちが主のうちに生きられるようにしてください。」
そして最後、第4は結びです。
 「父と聖霊とともに一体であって世々に生き支配しておられる主イエス・キリストによってお願いいたします。アーメン」

このように「呼びかけ」「信仰告白」「祈願」「結び」の四つから成っています。内容に入っていきましょう。

まず呼びかけです。「恵み深い父なる神よ」。この呼びかけには何が込められているでしょうか。神への信頼です。神さまはわたしたちに対して恵み深い。信頼して呼びかけるのです。同時に、「わたしたちはあなたを恵み深い方と信じていますので、どうか今もこれからも必ずそのようであってください」という願いもこめられてよいでしょう。

神に呼びかける。自分の中でだけ思ったり考えたりするのではない、新しい世界が開けます。神とわたし(たち)の間に交流が生まれます。

……