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【説教】憐れみと祈りの霊を
ゼカリヤ書 12:8-10,13:1
聖霊降臨後第2主日・2025年6月22日
日本聖公会では今日から1週間が「沖縄週間」と定められており、1昨日から今日までの3日間「沖縄の旅」が実施されています。80年前の1945年6月23日に、沖縄守備軍の司令官であった牛島満中将らが自決して日本軍の組織的な戦闘が終結したとして、明日6月23日が「沖縄慰霊の日」とされたことから、日本聖公会でもこの時期に「沖縄週間」が定められました。沖縄戦での死者は20万人を越え、なかでも民間人の死者がその半数近く、当時の住民の四分の一に及ぶと言われます。
沖縄教区にはすでに退職されましたが、石原絹子司祭という方がおられます。石原先生はまだ10代の頃、沖縄戦の爆撃の中を逃げまどううちに、お母さんを、そして弟も妹も亡くされた。沖縄戦の痛ましい事実を伝える語り部となって、長く平和のために活動してこられました。大切な存在です。
ところが今日の国際情勢に対応するとして、日本は今、大規模な軍備拡張を行っています。とりわけ最も平和を願ってきたはずの沖縄に軍事施設が次々に増強されている現実があります。
わたしは5月に北関東教区の一日静想日に招かれて栃木県の小山(おやま)の祈りの家に行ってきたのですが、その機会に佐野市郷土博物館というところを訪ねました。足尾銅山の鉱毒によって田畑を失い、生活を失い、命を脅かされた農民漁民のために、自分の命をかけた田中正造の遺品がそこに展示されていました。彼が残した遺品の頭陀袋があり、そこに入っていた小石と、憲法とマタイ福音書を綴り合わせたものなどを見ました。彼は聖書を頼りに生きていたのです。また展示の中に彼の日記の一節が掲げてありました。
「静岡県掛川をはじめ東京、栃木において軍備全廃を述べたり」
日清戦争のあと、日露戦争の前の時期に、「世界海陸軍を全廃すべし」と彼は訴えた。そんな非現実的なことを、と彼は笑いものにされたかもしれません。けれども旧約聖書の預言者イザヤは、ユダ王国の戦争準備を批判し、軍事同盟に強力に反対しました。そのために口を封じられることになりました。預言者イザヤは田中正造に通じ、またそれは日本国憲法の平和主義に通じています。「非現実的なこと」として軽んじるのではなく、平和の理想をしっかり掲げて、それに一歩でも半歩でも近づこう、近づけようとするのが、信仰者の姿勢です。
さて今日、ご一緒に心にとめたいのは先ほど読まれた旧約聖書・ゼカリヤ書の1節です。
「わたしはダビデの家とエルサレムの住民に、憐れみと祈りの霊を注ぐ。彼らは、彼ら自らが刺し貫いた者であるわたしを見つめ、独り子を失ったように嘆き、初子の死を悲しむように悲しむ。」12:10
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