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【説教】テモテが親しんできた聖書

テモテへの手紙Ⅱ 3:14~4:5

聖霊降臨後第19主日・2025年10月19日
聖光教会にて

   *

テモテは当時、エフェソという大きな都市とその周辺の教会の責任者でした。エフェソは今のトルコの西海岸に近い所です。エフェソの教会は、かつてパウロが伝道してその基礎を築いた教会です。
エフェソは古くから女神アルテミスを拝む宗教が盛んなところでした。パウロが伝道して、「人間の手で造ったものなどは神ではない」と言ったことがきっかけで、町中に騒動が起こりました。パウロは捕らえられて、集まった群衆が「大いなるかな、エフェソ人のアルテミス」と2時間ほども叫び続ける、という事件があったそうです(使徒言行録19:23-34)。そういう経緯を経て、エフェソ教会は発展していきました。

ところが今、エフェソ教会には非常な困難が生じています。それは、教会の中に福音を歪曲する人々が強い影響力を持つようになっていることです。たとえば、イエス・キリストの十字架と復活による救いを軽んじる。神よりも金銭や人間的な快楽を愛する。自分の利益のためには真実をねじ曲げる。そういう人々が力を持ってしまった教会の中で、指導者であるテモテが非常に苦しみ、疲弊している──そういう話が獄中のパウロに聞こえてきました。そこでパウロは何とかテモテを励ましたいと願って、祈りつつこの手紙を書いたのです。

パウロはテモテのことを以前からよく知っていました。パウロは今日の箇所で、テモテに対して聖書に立ち戻るように、聖書の持つ力に信頼するように勧めました。

「だがあなたは、自分が学んで確信したことから離れてはなりません。あなたは、それをだれから学んだかを知っており、また、自分が幼い日から聖書に親しんできたことをも知っているからです。この書物は、キリスト・イエスへの信仰を通して救いに導く知恵を、あなたに与えることができます。聖書はすべて神の霊の導きの下に書かれ、人を教え、戒め、誤りを正し、義に導く訓練をするうえに有益です。」
テモテへの手紙Ⅱ 3:14-16

テモテ、あなたは幼い日から聖書に親しんできた。その聖書に信頼しなさい。聖書から神の力と導きを得なさい。そう強くパウロは勧めるのです。

それではテモテは聖書(わたしたちの言う旧約聖書)のどのような箇所に親しんできたのでしょうか。聖書のどんな言葉から力を得てきたのでしょう。具体的なことは何も書かれていません。しかし想像してみましょう。それは、たとえば今日ご一緒に聞いた旧約聖書の言葉です。有名な話なのでテモテはよく知っていたはずです。

まず創世記第32章のヤコブの物語です。

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