- - 【説教】わたしを贖う者は生きておられる
- - 尹東柱「山間の水」
- - 【説教】悲しむ人々は
- - 【講演】張準相司祭・聖ガブリエル教会と大阪教区
- - 【説教】神様、罪人のわたしを憐れんでください
- - 【説教】テモテが親しんできた聖書
- - 【立教大学 尹東柱記念碑除幕式 スピーチ】
- - 【説教】わたしが手を置いたことによって
- - 【説教】主に希望をかける人は幸せ
- - 「秋の日」 リルケ
- - 【説教】わたしのうちに清い心を造ってください
- - 【説教】幸せな人、それは主のおきてを喜ぶ人
- - 説教者が必ず捨てなければならない習慣
- - 【説教】静まれ、わたしを神と知れ
- - 【説教】天を仰ぐ
- - 【説教】愛を身に着けなさい
- - 【講演概要】主イエス・キリストよ、おいでください ─ 聖餐式の祈りを味わう ─
- - 【尹東柱 立教時代の詩】
- - 【説教】誘惑に遭わせないでください
- - 【説教】マルタの三つの幸い
【説教】わたしを贖う者は生きておられる
ヨブ記 19:23-27
聖霊降臨後第22主日・2025年11月9日
聖光教会にて
*
今日の福音書(ルカ20:27-38)の中で、イエスはサドカイ派の人々の問いに対して正面から答えることをなさいませんでした。ここでサドカイ派の人々は、イエスに真剣な問いかけをしたのではありません。イエスをやり込めるため、イエスを陥れるために議論をふっかけてきたのです。それにまともに答える必要はない。逆にイエスは、サドカイ派の人々が見失っている大事な点を突かれました。
「神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神なのだ。」ルカ20:38
「生きている者の神」。あなたがたは生きているのか。神の前にしっかりと生きているか。あなたがたは空虚な議論に熱を上げているが、それは、神の前にしっかりと生きていないからではないか。生きておられる神の前に、生きている者として立ちなさい。理屈を重ねるのはやめて、真剣に神を求め、真実に神に呼びかけて生きてはどうか。これがイエスの反問です。
このサドカイ派の人々とは対照的に、真剣に神を求め、真実に神に呼びかけた。それも自分の命、自分の全存在をかけて神を呼び求めた人がいます。それが、今日の旧約聖書日課で聞いたヨブという人です。
主日の聖書日課としてヨブ記に触れることはめったにありません。今年はC年で、今日を含めて年に2回だけ。来年はA年で1回もありません。今日はその貴重な機会ですので、ヨブのことをお話しします。
ヨブ記の冒頭にこう書かれています。
「ウツの地にヨブという人がいた。無垢(むく)な正しい人で、神を畏れ、悪を避けて生きていた。」1:1
ヨブは多くの財産を持ち、家族にも恵まれて幸せに暮らしていました。ところが突然、非常な不幸に見舞われました。ヨブは一挙に子どもたちと財産を失い、さらに全身皮膚病にかかって灰の中に座り、ひどい苦痛に全身をかきむしるという事態になりました。
3人の友人たちがそれを聞いて、ヨブを慰めようとやってきたのですが、ヨブのあまりの悲惨さに、7日間地面に座って、話しかけることもできませんでした。やがてヨブは口を開いて、自分の生まれた日を呪います。ヨブは神のなさることがおかしいと訴えます。神への抗議ともとれるヨブの激しい言葉に対して、友人たちは黙っていることができず、ついに口を開いてヨブを説得しようとします。もっと神の前に謙遜になれ。こういう不幸に見舞われるのは、何かあなたに原因があるはずだ、と友人たちは言います。ヨブは到底それを受け入れることができず、3人の友人たちとの間に激論が交わされます。
議論が高じるうちに、友人たちはヨブに対して「お前はこんなに悪いことをした、あんなにひどいことをした」と、ありもしないことを並べてヨブを非難し、悔い改めを迫ります。友人たちの考えは結局、「因果応報」の考えなのです。
けれどもヨブは身に覚えのないことを受け入れるわけにはいきません。ヨブは神に答えてほしい。神が沈黙しておられることが耐えがたい苦しみです。それでこう言います。今日の聖書日課の少し前から読んでみます。ヨブ記第19章21節です。
「憐れんでくれ、わたしを憐れんでくれ。神の手がわたしに触れたのだ。あなたたちはわたしの友ではないか。なぜ、あなたたちまで神と一緒になって、わたしを追い詰めるのか。肉を打つだけでは足りないのか。
どうか、わたしの言葉が書き留められるように。碑文として刻まれるように。たがねで岩に刻まれ、鉛で黒々と記され、いつまでも残るように。
わたしは知っている。わたしを贖(あがな)う方は生きておられ、ついには塵の上に立たれるであろう。
この皮膚が損なわれようとも、この身をもって、わたしは神を仰ぎ見るであろう。
このわたしが仰ぎ見る。ほかならぬこの目で見る。腹の底から焦がれ、はらわたは絶え入る。」19:21-27
……
RSS





