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【説教】その上に主の霊がとどまる

イザヤ書 11:1-10

降臨節第2主日・2025年12月7日
上野聖ヨハネ教会にて
   *

今日の礼拝が始まるとき、わたしは入口に立って、オルガン前奏を聞きながら正面の十字架を見つめ、また礼拝堂全体を見ていました。すると何かが上の方から降(ふ)ってくる、何かがこの空間に下(お)りてくるような感じが起こりました。それは今日の旧約聖書の言葉によるものだったと思います。

降臨節第2主日。旧約聖書日課はイザヤ書の第11章でした。

「エッサイの株からひとつの芽が萌えいで
その根からひとつの若枝が育ち
その上に主の霊がとどまる。」11:1-2

「エッサイの株」「エッサイの根」(11:10)。これはクリスマスの聖歌72番の元になっている箇所です。

♪ エッサイの根より 生(お)いいでたる くすしき花は 咲きそめけり/わが主イエスの 生まれたまいし このよき日よ

今日のイザヤの言葉は、救い主イエス・キリストの到来を予告するものとして読まれ、また歌われてきました。

「エッサイの株からひとつの芽が萌えいで
その根からひとつの若枝が育ち
その上に主の霊がとどまる。」
これは遠い昔、預言者イザヤが語った言葉です。より正確に言えば、イザヤが神から霊感を受けビジョンを示されて歌った言葉、というほうがよいかもしれません。今日は、ここでイザヤが何を語ったのかに聞き入ってみましょう。

「エッサイの株」「エッサイの根」とは何でしょうか。エッサイとはダビデ王のお父さんの名前です。ベツレヘムの人でした。エッサイの息子ダビデがイスラエルの王となり、その子孫が代々王位を継承してきたのがユダ王国です。イザヤが生きた時代は、何度か王様が交代しているのですが、この預言が語られたのはおそらく、アハズという王様の時です。すでにユダ王朝(ダビデ王朝)は250年以上続いていました。

ところがイザヤが神から示されたのは、この王朝は滅びる、ということでした。本来イスラエルの王というのは、神様の求められるところを行って人々の安全と平和を守ることが使命でした。ところが現実にエッサイの子孫アハズ王がやっていることは、軍備の増強、戦争の準備です。弱い人々はうち捨てられ、偽りが横行し、富める者はますます富み栄え、貧しい者はますます苦しめられている。力ある者は神を畏れることを忘れ、自分の利益ばかりを追求している。このような国は滅びる、というのが、イザヤが神から示されたことだったのです。

「エッサイの株」というのは、エッサイの子ダビデ、またその子孫から成長した大木のようなユダ王朝は、やがて倒壊してもう切り株しか残らない。そういうことがやがて起こるという、恐ろしい預言だったのです。このようなことを言うイザヤは、王家や貴族から当然憎まれ、迫害を受け、口を封じられることになります。

けれども大切に聞きたいことは、ここでイザヤが神様から示された将来の希望を語っているということです。

……