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【説教】人の子よ、自分の足で立て──エゼキエルの召命
エゼキエル2:1‐7
2021年7月4日・聖霊降臨後第6主日
上野聖ヨハネ教会にて
ひとりの若者が川のほとりに座っていました。年は30歳。名はエゼキエル。その名前は「神は強めてくださる」という意味ですが、彼は無力感に打ちひしがれていました。自分はこの状況の中で何もできない。神も沈黙しておられるかのようです。
彼、エゼキエルは祭司ブジの息子として生まれ、自分も父を継いで祭司となる道を歩んできました。ところがバビロニア帝国の圧倒的な攻撃によりエルサレムは陥落。ユダ王国は滅び、エルサレム神殿は破壊されてしまいました。そのうえ、数千人が強制的にバビロニアに移住させられました。「バビロン捕囚」と呼ばれています。その中にエゼキエルもいたのです。
ここはメソポタミア文明の中心地、チグリス・ユーフラテス川の下流に張り巡らされた運河のひとつ、ケバル川のほとりです。ここに今、30歳のエゼキエルは、何の希望もなく、首をうなだれてうずくまっています。
急に激しい風が吹いてきました。大きな雲が巻き起こり、その中に火が激しく燃え始めました。恐ろしい光景にエゼキエルは飲み込まれそうです。その中に生き物のようなものが動いています。生き物の上のほうには水晶のように輝く大空のようなものが広がり、その中にサファイアのように見える王座の形をしたものがあり、その上には人間のように見える姿をしたものがありました。
光と火を放つその神々しいもの──エゼキエルは、主なる神の栄光の姿の有様を見たのです。彼は恐れのあまりひれ伏しました。
そのとき、語りかける者があって、エゼキエルはその声を聞きました。神の声です。
……