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【国境を越えて老司祭と分かち合った尹東柱の物語】
金信貞(キム・シンジョン)
- 2019年5月、思いがけない出会い
計画していなかったのに、いつの間にかどこかで始まり、まるで車輪をつけたように転がり続けることがある。井田泉司祭との出会いがそうだった。2019年5月、日本訪問を計画する際、井田司祭との出会いは当初の予定にはなかった。「尹東柱(ユンドンジュ)を記憶する人々に何年も前から会っています。いつか本にする予定です」と訪問の目的を話すと、「井田泉司祭にぜひ会ってみてください」と積極的に提案してくれたのは京都の李元重(イ ウォンジュン)牧師だった。志ある人たちの協力で井田司祭に連絡が取れ、幸いにも出国前にインタビューの時間を決め、質問内容をまとめて送ることができた。5月21日正午頃、大阪・関西国際空港に到着したとき、井田司祭からのメールも届いたばかりだった。
「準備する時間があまりないでしょうが、できるだけ有意義な時間を持ちたいと思います。それで、もしよろしければ、私のプロフィールや尹東柱について書いた文を私のホームページやブログで見ていただければ幸いです。」
宿題をいただいた! 尹東柱に関する対話を分かち合いながら豊かな時間を過ごしたいという願い、そして準備のための細心の配慮まで、幾重もの心遣いが感じられた。心が忙しくなった。準備する時間は一日しかなかった。インタビューは2日後だったが、翌日22日は別の予定があった。関西空港で簡単に昼食を済ませた後、急行で京都に移動した。ホテルに到着し、急いで旅装を解き、小さな机に座ってノートパソコンを立ち上げ、司祭のホームページとブログ、フェイスブックを順番に見た。彼が聖職者として記録した教会の日常、聖書、日韓のキリスト教史、そして自ら翻訳した尹東柱(ユンドンジュ)、金素月(キムソウォル)の詩に至るまで、膨大な資料が次々に整理されていた。どれだけ見ることができるだろうか。早朝に家を出て、バス、飛行機、急行列車に乗り換え、長い距離を移動したため、疲れが溜まってくる時間だった。コーヒーを飲みながら、しっかりと集中して、じっくりと資料を読み始めた。
……
著者・金信貞氏
韓国放送通信大学国文科教授。
論文「満州物語と尹東柱の記憶」、「二重言語/多言語状況と朝鮮語詩作の問題──尹東柱の詩を中心に」等。
この文は韓国の文芸雑誌『白潮』第12号(2023春)、露雀洪思容文学館、2023.3.20、に掲載されたものを井田が訳したものです。
この翻訳は『キリスト教文化』vol.21 2023.6.30 に掲載されました。